子育て世代をターゲットとしたブランディングの転換で
経営改善を達成
無垢材や漆喰などの自然素材を活かした南欧様式住宅の施工を得意とする木造建築工事・リフォーム工事業者。平成11年の設立以来、播磨町を中心に「木の温もりを感じる家づくり」を展開している。
株式会社ケーアイリビングは無垢材や漆喰を使った家づくりを強みとする工務店。しかし新型コロナウイルスの流行や、無垢材や漆喰を扱う競合の増加といった要因が売上に大きな影響を及ぼしていた。そんな折に当協会の担当者が同社を訪問し、自社ブランディングの課題を聴取。専門家からのアドバイスを受けられる兵庫県よろず支援拠点(以下、「よろず支援拠点」)の紹介につながった。専門家からは「子育て世代」をターゲットとした戦略転換のアドバイスがなされ、技術面を訴求するブランディングから生活イメージの提案へと方針転換。結果、同社の価値を理解していただけるお客様が増え、適正な利益を確保できる体質に変わり、利益率が向上した。
設立当初はハウスメーカーの下請けでしたが、友人から顧客を紹介され、木を全面に出した南欧風の住宅を手掛けたことがありました。それをきっかけに、自社による注文住宅事業を本格的にスタートしました。
当社の強みは、お客様がご自身でプロデュースするかのように家づくりに関われること。例えばお客様に施工中の現場を見ていただき、大工と直接やりとりしてイメージを伝えることも可能としています。一般的な工務店とは真逆のアプローチと言えるかもしれません。
技術面では、断熱性能に自信を持っています。無垢材や漆喰などの自然素材をあわせて高い断熱性能を実現することで、快適な住環境を早くから提供してきました。
業績は安定していたのですが、新型コロナウイルスの流行により、当社での施工をご検討されるお客様と対面でコミュニケーションすることが難しくなってしまいました。細部へのこだわりや断熱性能の良さといった当社の価値は対面のコミュニケーションがあってこそ伝わるもので、対面での打ち合わせが減ったことが売上にも大きく影響しました。そんな苦境の中、協会の担当者さんが業況確認に訪問してくださったことが転機となりました。
協会の担当者さんには、当社の強みや良さが顧客に周知されていない状況であり、ブランディングに課題を抱えていることを相談。そこで課題解決を図るために新たな取り組みが必要ではないかと提案を受け、よろず支援拠点を紹介いただきました。
専門家との面談では、ブランディングの見直しを提案されました。それまでは得意分野の断熱を中心としたアプローチを行っていましたが「断熱のアピールだけでは顧客の心に響かない」と指摘を受けたのです。
技術的な優位性ではなく、その先にある「お子様と一緒に健康的に過ごせる温かい住まい」という具体的な生活イメージを前面に出した見直しに最初は戸惑いました。従業員からも疑問の声が上がりましたが、議論を深めるうちに、私たちが手掛ける住宅には既に子育て世代にアピールできる強みが備わっていることに気づきました。社内の月例ミーティングで従業員に対して新たなブランディングについて繰り返し丁寧に説明することで、徐々に従業員の理解を得ていきました。

また、専門家からは対外的なアピールの1つとして「『ひょうご仕事と生活の調和』推進企業宣言」を行うようにアドバイスがあり、よろず支援拠点を通じて、ワークライフバランスの専門家も新たに紹介いただきました。元々従業員の家族の事情に応じて勤務時間を柔軟に調整するなどの対応を行ってきた背景があり、宣言を行うための条件もスムーズにクリアすることができました。宣言の申請を進めるうちに、若い世代はワークライフバランスを大切にする価値観を持っており、ブランディングとも密接に関係していると認識することができました。
こうした専門家のサポートはもちろん、協会の担当者さんのサポートも助かりました。専門家との面談では毎回同行してくださり、若い世代の視点から貴重な意見もいただきました。この継続的な伴走支援があったからこそ、今回の方針転換も不安なく進めることができたと思います。
専門家のアドバイスを実践して1年、明確な成果が表れてきています。生活イメージを前面に出したブランディングに転換したことで、当社の価値を理解していただけるお客様が増加。売上にはまだ課題を残すものの、適正な利益を確保できる体質に変わり、利益率が向上しました。
今後の目標は「播磨町でリフォームと言えばケーアイリビング」と言われる存在になること。そのためにはさらにブランディングを強化し、集客や売上にもつなげていくことが不可欠です。会社としてさらに成長できるように新たなチャレンジを続けていきます。

専門家の指摘で 気づいたことは?
技術的な長所をそのままPRしても、必ずしもお客様の心に響くわけではないと専門家から指摘され、作り手としてはどうしても性能の高さを強調したくなりますが、お客様にとっては性能そのものよりも、それによってどんな生活が実現できるかの方がずっと重要だと気づきました。私たちだけでは見えていなかった課題を専門的な視点から指摘していただけて良かったと感じています。また協会の担当者さんから一般消費者の目線で意見をいただけたこともありがたかったですね。
ブランディングの方向性はどのように決まりましたか?
「子育て世代をメインターゲットに設定する」というアドバイスがありましたが、初めはそんなことは考えていなかったため、何をPRすればいいか分かりませんでした。しかし、当社が施工する住宅の特徴について、見せ方と伝え方を変えるだけで効果的にPRできることが分かりました。以降はホームページで掲載する写真を子育て世代へのPRという視点で選び直すなど広告のコンセプトを見直すことで、お客様が一目で当社の強みを理解できるブランディングが実現できました。
複数の専門家からのアドバイスによる効果は?
ブランディングに加え、ワークライフバランスの専門家も紹介いただき、特に若い世代はワークライフバランスを大切にしていることを認識しました。ワークライフバランスについては以前から残業削減や柔軟な勤務時間調整を実践していましたが、これが先進的な取り組みであることを専門家から評価いただき、「『ひょうご仕事と生活の調和』推進企業宣言」を行いました。これにより対外的な信頼性が大きく向上し、従業員の帰属意識が高まる効果もあったと感じます。
社内の反応はいかがでしたか?
ブランディングの方針転換に対して、当初は従業員からも戸惑いの声が上がりました。私自身が断熱性能中心の戦略を推進してきただけに、家族向けのイメージ戦略を行うというのは大きな転換でした。しかし、新型コロナウイルスの流行で中断していた月例ミーティングを再開し、新しい方向性を繰り返し説明することで徐々に理解を得ていきました。現在では従業員も顧客の反応の違いを実感しているようで、新戦略の有効性を全社的に共有できていると感じます。
支援を受けて変わったことは?
最も顕著な成果は利益率が向上したことです。
これまで訴求していた断熱性能などの技術的な強みは説明が難しく、お客様に理解していただくためには直接会ってお話しすることが不可欠でした。しかし新型コロナウイルスの流行以降は対面での打ち合わせが減ってしまい、当社の強みがうまく伝わらないことが売上にも影響してしまいました。
ブランディングの見直しをすることでお問い合わせの時点から当社の価値を理解していただけるお客様が増えました。無理に価格を下げなくても受注ができるようになり、適正な利益を確保しながら最適な提案ができる環境が整いました。
また副次的な成果として、ブランディングの見直しを社内に浸透させるために復活させた月例ミーティングの効果も実感しています。業績をこまめに共有することで従業員が会社の成長を実感できるようになりましたし、会社が従業員にしてほしいことを明確に伝えられるようになりました。そのことがブランディングの推進にも良い影響を与えていて、例えば従業員に現場の写真を積極的に撮影してもらうことで、ホームページでの情報発信を充実させることができ、集客につながっています。
今後は利益率だけでなく集客や売上についても向上させるため、さらなる取り組みを進めていく予定です。
信用保証協会の支援を受けた感想は?
協会の担当者さんが丁寧にサポートしてくれたおかげで、良い専門家に巡り合うことができました。専門家との面談に同行してくれ、当社の課題に一緒に向き合ってくださったのもありがたかったです。専門家だけでなく若い世代の視点からのご意見をいただけたことで、より議論を深めることができました。専門家と信用保証協会の両方がサポートしてくれたからこそ、自社だけではできなかった経営改善を実現できたと思います。
担当者のコメント
専門家の方は技術的・専門的な視点から、社長は経営者としての視点からお話しされますが、私は第三者として一般消費者に近い立場から「実際に私が買う立場だったらこう考えるかもしれない」といった率直な意見をお伝えしました。異なる視点を組み合わせることで、より実践的な解決策を導き出せたと感じています。今後も「分からないことは教えていただき、一緒に考える」という姿勢を大切に支援を続けていきます。